公立学校で1年単位の変形労働時間制を導入しようとする動きが着々と進んできています。
今年(2019年)の臨時国会で法案が通れば、2021年度から自治体の裁量で変形労働時間制が導入される見通しです。
果たして、この改正案は教員の働き方を良くする上で本当に効果があるのか?
インターネット上ではこの件について反対の意見が目立つように思います。
Twitterのフォロワー数は4,000人以上。
おかげ様でたくさんの人とつながることができて嬉しいです。
では、変形労働時間制が採用されたら、教員の働き方はどうなってしまうのでしょうか?
実はこの制度、すでに国立大学付属校では導入が進んでいます。
今回は導入校で勤務されているT先生(30代 男性)に実際に、お話をお伺いしました。
「公立で導入されたら、地獄でしかない」そんな言葉が印象的でした。
・繁忙期は定時がのびる、しかも当然のように定時以上に働いている
・夏休みは実質今まで通り=つまり普段定時がのびているので確実に損
・夏休みの短時間勤務は「どうせ出勤したし働いておこう」と完全に形骸化
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もくじ
教員の変形労働時間制はいつから?すでに導入している学校がある
さっそくですが、自己紹介もかねましてTさんの経歴を簡単にお願いします
はい、私は以前は公立学校教員として教壇に立っていました。
数年前から、国立大学法人附属学校で働く話があり、公立学校を退職し、その後附属学校で働き出しました。
国立大学は2004年に国立大学法人へと移行し、職員は公務員から非公務員となっています。
それに伴い、残業代を支払わない代わりに本給の4%に相当する「教職調整額」を上乗せて支払うことを定めた「給特法」も適応外ともなっているんですよ。
参考 Yahooニュース 変形労働時間導入の先行事例、国立大・附属学校で、働き方改革は進んでいるのか?
国立大学付属校の教職員は公務員ではない
そうです。このことにより大学側は残業代の支払いをしなければいけなくなったのですが、大学の財政は苦しく、膨大な残業をしてきた教員に残業代の支払いをすることが難しいのが現状です。
そこで全国の国立大学法人附属学校で次々と1年単位の変形労働時間制を取り入れました。
夏休み等の勤務時間を短くする代わりに、学期中に勤務時間の長い日を作ることで残業代の支払いを抑制しようという狙いです。
私が附属学校に赴任したときには既に1年単位の変形労働時間制が取り入れられていました。
教員の変形労働時間制のデメリットとは
勤務時間の制限はあってないようなもの
まず、赴任したばかりの頃の職員会議で1年分の勤務時間のリストが配られました。
見慣れないものだったので見入っていると、そばにいた先生が「あっ、勤務時間ね。そんなのあってないようなものだよ」と話してくれました。
その先生は大学の正規採用教員ではなく、公立学校との人事交流でやってきた方だったので公立学校での働き方も知っておられました。
その方いわく「公立と一緒、一緒」。
労基法が全面適用されるのだが…
附属学校教員は非公務員となった以上、労基法が全面適応されます。
ブラックな働き方の実態があれば労基署が入ることもできるし、実際に全国の国立大学法人附属学校では労基署が入った事例が複数あります。
しかし、実態はサービス残業の温床で働き方改革とは程遠い状況でした。
勤務校では教員は学校に朝来ると昔ながらの出勤簿に捺印することが求められます。出退勤時間を記入する欄はありません。
また、4月なんて連日会議だらけです。どこの学校も一緒ですよね(苦笑)。それに加えて怒涛の新学期準備があります。
入学式を迎える頃には疲れ果てるほどの残業地獄(涙
それはまさしく公立学校と同じ働き方でした。
どれだけ働いても残業時間はゼロ
そして、給料日が近くなってまた発見がありました。給与明細に残業時間の欄がありました。しかもご丁寧に残業時間は「0」と表記されていました。
翌月も、そのまた翌月からもずっと残業時間「0」と印字され続けました。
そもそも出退勤時間を把握するシステムもないので、残業していないことになっています。
「1年単位の変形労働時間制」下では、勤務時間の縛りとは、まさに人手がほしいときに教員を逃がさないためのものですね。
附属学校には教育実習の時期になれば大学生らが大勢やってきて、教員はその指導にあたることが求められますが、そんなとき等、逃げられないようにしてあります。
実習中は勤務時間が長く設定されていますが、勤務時間を過ぎてからようやく自分の授業準備を進める教員の姿を毎日のように目にします。
もちろん、それは実質サービス残業のような扱いになっています。
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教員の変形労働時間制にメリットは?夏休みはどんな感じ?
正直、教員の変形労働時間制のメリットはない
附属って夏休みが短いんですね。そこにゼロ時間勤務日や一斉夏季休業が入ってくるので年休はほとんど使うタイミングがありません。
また、勤務時間を短くされても、仕事が終わりません。
2学期の準備をしているから時間がかかるのは当然ですが、このタイミングで準備しないと後が大変です。
とはいっても、公立と同じで用事があるときはさっさと定時で帰ったり、年休で帰ったりしやすいです。
その通りです!4時間勤務日なんてのもありますが、たった4時間働いて帰るのは要領悪いので、いつも通り働いた方がいいよなってなりがちです。
正直、夏休み中の勤務時間は完全に形骸化していますね。
長期休暇のときにようやく年休を使えるタイミングを迎えるわけなんですが、4時間勤務日に休もうとするとなんと年休1日分を消費しなければいけなくなります。
反対に勤務時間が長い日を休むのにも年休1日分で済むます。
教員の変形労働時間制で部活動はどうなる?
部活動についても勤務時間のカウントから除外され「特殊勤務」扱いされています。
1日3,000円どころか、その半額くらいでしたよ(涙
計算したら時給150円…なんて時もあって、ため息しかでませんでした。
公立学校は来年度から時間外勤務の上限が設定されますが、自発的勤務の上限なので、罰則がないから、国立より悪質だと思いますよ。労基署が入れませんしね。
36協定で残業命令できる内容・限度時間が決められていても守られることなく、限度時間を超えた業務命令をされることもあります。もちろん残業代はゼロです。
実質的な時間外労働はむしろ増加する
2019年4月からは働き方改革関連法により、勤務校でも公立学校に先立って時間外勤務時間上限(月45時間、年360時間(例外規定あり))が設けられました。
出退勤時間の把握だけは始まりましたが、月あたり100時間超えという限度時間を完全に超えた時間もの残業をする教員もいます。
また、残業をしたと明確に記録に残すように指示を受けているのに、残業代の支払いはないままです。
管理職が残業時間についてより意識するようになったのは感じますが、時間外労働の削減には繋がってません。
いちおう、給特法が適応されない国立大学法人附属学校なら労基署が入ることもできるし、裁判すれば勝てるというのが強みではあります。
これが給特法が適応される公立学校で導入されたら地獄だと思いますね。
「1年単位の変形労働時間制」によりたとえば19時まで勤務時間とされた後に残業しても、給特法によって「自発的勤務」とされるので公立の先生は裁判ではきっと勝てないでしょう。
教員の変形労働時間制には反対の立場です
文科省は教員の変形労働時間制を早く導入したい
時間外労働についてですが、
2020年度から公立学校でも月45時間、年360時間の勤務時間外労働の上限について話が上がっていますね。
ただし、あくまで勤務時間外に働いた分は「自発的勤務」の扱いのままなので、この上限時間を超えて働いても使用者側を追及するのは難しいと思います。
このような具合に、公立学校で「1年単位の変形労働時間制」を取り入れても嫌な予感しかしないです。
また家族的事情を抱えた教員については「1年単位の変形労働時間制」の適応除外となるケースもありますが、いつまでも適応除外してもらえるわけではないですよね。
教員の生活スタイルによっては、生活が破綻してしまいます。
このままではただでさえ教員のなり手が減っているのに、次々と離職者を生んでしまうのではないかと不安です。
教員の変形労働時間制の署名活動
公教育の崩壊がますます懸念されるのではないか。
そんな中、変形労働時間制に反対する有志の方々がネット上で署名活動をしています。
僕も実際にネットで署名しました。
大丈夫なのだろうか? この国の教育制度は?
教員を続けたい人が、働きがいをもって教職を続けられるように。
日本の未来を創る、教育制度について。
みんなで一緒に、考えていきましょう。
*緊急署名にご協力下さい*
教員を一層疲弊させる “制度改悪” が進んでいます
「一年単位の変形労働時間制」です
これにより部活顧問は命令可能、教員志望者は減り、教育は廃れます
署名とコメントをお寄せ下さい
皆さんの声を国会に届けます!
斉藤ひでみ・工藤祥子https://t.co/WfHPTUeOkt
— 斉藤ひでみ/現職教員 (@kimamanigo0815) September 16, 2019
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