「教員は残業が出ないって本当なの?」
「給特法という法律の名前をチラッと聞いたことがあるけど、どんな内容なんだろう?」
「教員に変形労働時間制が導入されるらしいけど、よくわかっていない」
そんなあなたのための記事を書きました。
なにかと話題の給特法と変形労働時間制について、極力わかりやすく解説していきます。
現在は企業の採用面接や新人教育も担当しています。
「教師からの転職」をテーマに発信しつづけた結果、
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おかげさまでたくさんの人とつながることができて嬉しいです。
公立学校の先生たちがどれだけ働いても残業代が出ないのは、「給特法」という法律がもとになっています。
給特法改正案については、2019年秋の臨時国会で審議・成立しました。
実際にいつから導入されるのか?
働き方改革に関する条項について、2020年4月から。
変形労働時間制の条項については、2021年4月から、施行されています。
実は僕が法律についてきちんと勉強するようになったのは、教員を辞めてからなのです。
給特法って何? どんなことが問題にあがっているの?
という人に向けて、なるべくかみ砕いてご説明していきますね。
・教員の時間外労働と法律について
・なぜ教員は残業代が支給されないのか?
・給特法改正問題について
・ネット上の意見のまとめ
*法解釈についてはネットの情報を元に法学部出身の方に監修いただきましたが、間違っている点、わかりにくい点があればご指摘いただけると助かります
もくじ
給特法改正についてわかりやすく解説する前に、まずは労働基準法を理解しよう
給特法、正式には「公立学校教育職員の給与等に関する特別措置法」。
これは我が国の労働者について労働時間や休日、給与などを定めた労働基準法の特別法です。
つまり、基本は労働基準法で、特別な箇所だけ給特法を適用するよ、という仕組みになっています。
特別な箇所とは、主に労働時間と給与について。
給特法改正をわかりやすく~教員と労働基準法~
1日の労働時間は8時間まで
労働基準法 第32条
(1)使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。
(2)使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について8時間を超えて、労働させてはならない。
出典:厚生労働省ホームページ
簡単にいうと、1週間の労働時間は40時間までだよ。
1日の労働時間は8時間までだよ(休憩のぞく)。
これが大原則です!
そこでこちらの条文が適用されます。
労働者に残業をさせることもできる
少し難しいですが、こちらの条文が根拠になっています。
使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
いわゆる36協定(サブロクキョウテイ)と呼ばれるものです。
労働組合がある場合は、組合との協定
労働組合が職場にない場合は過半数を代表する者との協定
があれば、使用者は労働時間を延長することができる。
これが、世間一般で適用されている時間外労働に関する規定です。
給特法の歴史をわかりやすく振り返ろう
教員からの訴訟が相次ぐ
高度経済成長、そして人口が増え始めた昭和40年頃から、教員の超過勤務に対する訴訟が相次いてきました。
そこで国は、一つの法案を打ち出します。
それが給特法です。
そんな国の思惑が透けて見えるような……
●時間外勤務手当は支給しない
●給与月額の4%を教職調整額として支給する
●校長が教員に時間外勤務を命じることができるのは、4項目かつ臨時・緊急時のみ
教職調整額4%の根拠は?
「4%加算って、なんか少なくないですか?」
通常の公務員の給与に比べて4%を加算する、との根拠は、昭和41年(1966年)の文部省の勤務実態調査が元になっています。
当時の先生たちの超勤(残業時間)の平均が月8時間だったことから、そこを基準に4%という数字がはじきだされています。
2016年の調査によると、小学校の教員で3割以上、中学校で約7割の先生たちが過労死ラインの80時間を超える残業をしています。
超勤4項目とは
時間外勤務を命じることができるのは、
■生徒の実習
■学校行事
■職員会議
■非常災害等やむをえない場合に必要な業務
の場合のみです。
しかも、4項目に該当し、かつ臨時緊急時のみ、ですので、
明日に回してもいい職員会議、なんかは該当しません(一応、法律上は)
部活動は超勤4項目ではない
では、実際現場で働いている先生方はどうでしょう?
「テストの採点のために家に答案用紙を持ち帰って残業してる」
(家で働いていても、当然『残業』です)
「部活指導のため、平日も定時を超えて働き、土日も出勤している」
特に部活は超勤4項目には該当しないのに、今なお多くの教員が部活指導のため、本来定められている労働時間を大幅に超えて、働いているのが現状です。
いわば、先生たちの自発的なボランティアによってなんとか支えられてきた日本の教育制度。
しかし、この制度は崩れつつあります。
給特法のデメリット、相次ぐ教員の過労死・病気休職
担当授業の準備、部活動指導、保護者対応など
年々増加する仕事量、そして勤務時間、疲弊していく現場。
現在、病気等で求職している教員は全国に5,000人以上いると報道されています。
また、2007年から2016年までの10年間で少なくとも63人の公立学校の教職員が過労死と認定されています。(実数はもっと多いでしょう)
給特法改正の概要をわかりやすく
では、給特法は2019年の臨時国会でどのように改正されたのでしょうか?
参考)教員の労働時間を柔軟に、文科省法案を提出へ 日経新聞オンライン
・1年単位の変形時間労働制の導入
・残業上限(月45時間:年間360時間)とする指針の遵守
・部活動指導員、授業準備などを手伝う外部スタッフを拡充
また、文科省の進める働き方改革についても概要が報道されています。
・部活動、授業準備なども勤務時間に含め、タイムカードで管理
・部活指導員、授業準備などを手伝うスタッフや外部人材を拡充
・教員向けパソコン配備をすすめ、業務を効率化
教員の変形労働時間制についてわかりやすく解説
出典:朝日新聞デジタル
変形労働時間制とは、グラフにするとこんな感じです↑
例えば、繁忙期は19時までの勤務、その代わり夏休みなどの比較的余裕がある時期は、15時までの勤務とする。
1年間トータルで労働時間が適切になるように調整をする。
そうなると厳しくなるのは、子どもを保育園に預けているパパママ教員や介護事情等を抱えている教員ですが…
個別の事情等を抱える教員は、除外となる見通しです。
給特法改正、条例で決まる具体的な中身
実際の給与や労働時間については、各都道府県や市町村が決める「条例」にもとづいて定められています。
たとえば、東京都でしたら「学校職員の給与に関する条例(昭和31年)」というものがあります。
給特法改正にもとづいて、各自治体も条例を改正していくわけですね。
変形労働時間制についても、実際に導入するかは各自治体の判断によるとされています。
すでに導入された学校もあります、「導入されたら地獄」とのこと(号泣。
実際にいただいた体験談はコチラ↓
給特法改正、文部科学省のHPがわかりやすい
文部科学省ホームページの「公立学校の校長先生のためのやさしい!勤務時間管理講座」というページに、変形労働時間制の説明がなされています。
文科省様の公式見解、ということはこの通りに法律が運用されることでしょう。
以下、資料を抜粋して掲載させていだだきます。
変形労働時間制の制度の概要
1年以内の期間を平均して、1週間当たりの労働時間が40時間を超えないことを条件に労働時間を配分することを認める。
対象となる労働者の範囲、対象とする期間、労働日および労働時間については、自治体ごとに定めて実施する。
変形労働時間制の具体的な中身
労働日数の限度は1年280日まで。
労働時間の限度は、1日につき10時間まで、1週間につき52時間まで。
連続して労働させる日数の限度は6日まで。
育児、介護、職業訓練や教育を受けるものは、その他特別な配慮を要する者については、必要な時間を確保できるよう配慮が必要。
給特法は今後、どのように改正すべきか?
・変形労働時間制は勤務時間が増えるだけだ
・罰則なしの「指針」はそもそも機能するのか?
というツッコミ所満載の給特法改正案ですが、
では、今後はどのように改正すれば、教育の現場はもっとよくなるのでしょうか?
ネット上の声は主に2種類に分かれています。(と僕は勝手に思ってます)
(1)給特法を廃止する
給特法を廃止し、当記事の一番最初に紹介した労働基準法を適用する。
つまり、民間企業や公務員行政職などと同じ基準を適用する。
月45時間以上の労働時間の禁止で超過労働を抑えます。
ちなみに民間企業では、すでに2019年4月より罰則つきの規定になっています。
(大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月から施行)
出典:厚生労働省ホームページ
・時間外労働は、原則月45時間 年間360時間まで
・特別な事情がある場合は、年間720時間まで(ただし要件が厳しい)
・違反した場合は6ヶ月以内の懲役または30万円以下の罰金
■メリット
労働時間に対して残業代がきちんと支払われる
残業代がかかることで、管理職・教育委員会・自治体も残業抑制する方向で動く
■デメリット
財源が無い
教員の残業代をきちんと支払おうとすると年間約1兆円の予算が必要との試算あり
(2)給特法を守る
給特法はきちんと適用すれば、超勤4項目かつ緊急と認めた場合以外は時間外労働を命じてはならない、とむしろ残業時間抑制につながります。
現行制度のまま、業務内容を精査し、働き方改革を推し進める考えです。
部活動も超勤4項目を盾に拒否できます。
もちろん、変形労働時間制は導入しない方向で。
■メリット
きちんと適用できれば、残業時間の抑制につながる
超勤4項目に該当しない業務(特に部活)はやらなくてすむ
■気になる点
すでに法律違反が横行している現在の制度をきちんと守れるのか?
給特法改正に対する僕の意見
(1)と(2)どちらが優れているというわけではなく、教育の現場をなんとかしたいという思いはみなさん一緒ですし、何より変形労働時間制はアカンやろという考えでは一致してます。
ちなみに僕は(1)の給特法廃止派です。
民間と同じ基準を教員にも適用します。
違反した自治体や学校は労基署にチクります。
同時にマスコミにもリークして、ぶっ叩いてもらいます。
違反した教育長や管理職はどんどんブタ箱にぶちこみます。
(実際には執行猶予かな)
ちなみに労基署はちゃんとした証拠があれば結構動いてくれますよ。
僕が現在つとめている会社も10年以上前に労基署が入ったらしいです(笑)
その後、たくさんの改善や労使交渉を経て、現在ではホワイトとも呼べる職場になっています。
部活は「部活動ガイドライン」を厳格適用して、週3くらいのゆる部活にします。
大会も減らしましょう!
それ以上練習したければ、よそでやってくれ。
財源? 消費税もう一回上げたらいいやん(極論です)
またはお年寄りへいく介護・健康保険関連の費用を減らします(極論です)
日本の未来を創るためには、これくらい思い切った政策が必要だと思っています。
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